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なろうの功罪

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 小説家になろう。別に小説家になりたくなくても、エッセイ専門で投稿し、まるでブログのような使い方をしてる方もいらっしゃいます。

 自分を「読み専」と称し「読み専が紹介するおもしろかった作品」なんてのを投稿すると、読み専のくせに日頃心血を注いで書いてる者が到底届かない評価を得たりするという、本当にカオスのような世界が広がっています。

 ひとつこのサイトは罪を犯しました。

 小説というもののハードルを一気にドカンと下げてしまったのです。
 これまでも子どもが読むような児童書のような作品から、小難しい文学のような作品まで、様々な作品が出版されていましたが、これまで商業ベースに乗らなかったような個人の頭の中だけでしか成立しなかったような欲望が、何十万という人の目に触れ、それが面白いと評価されたりという事になります。

 ともすればカネの匂いがするのに出版社も黙っちゃいません。
 なろうで書く→人気が出る→書籍化→人気が出る→アニメ化

 という流れが確立しました。もう確立しているのです。

 いまアニメ放映してる有名なのは、なんでしたっけ?
 

 もうひとつ、ちょっと長くて完結まで遠そうですが、


 というのも有名です。


 若手のライトノベル作家がペンネームを変えて、これまで担当にボツにされてしまった作品を投稿し、評価を得て書籍化させたりという話も聞きますが、現在の主流は明らかに、若手の登竜門といったところでしょうか。

 というか読み手すらも若手が中心であるというのがちょっとした問題でして……。

 小難しい文章は嫌われる。
 行間を空けて目に優しくしないと読んでもらえない。
 個人的に評価している作品をひとつ紹介します。


 非常によくできていて、深く考察された、できのいいSF作品です。
 救世主カズマなんてのが出てくるからという理由ではなく、物語の構成も、題材もなにもかも素晴らしいのに、評価を見てもらえれば分かる通り、サッパリです。
 鳴かず飛ばずもいいところ。どうせ「なろうじゃ受けないから」なんて作者の方も諦めてしまって、もっと分かる人に読んでもらおうと賞に応募してたりします。

 読んでもらえば分かると思うのですが、この作品、読むのが非常に疲れます。
 文章とか構成とか内容以前の問題で、まったくもって愛嬌がないのです。
 まるで「分かる人にだけ読んでもらえたらそれでいいから」というのが体現されたかのような、テキストの文字がごちゃっと上がってきて、なろうで飼いならされた私の眼力と、半分溶けたような脳の理解力が戦いを始めます。

 読み切ったら私の勝ち。
 途中で目が滑ったら「ぼくはいまここにいる」の勝ちだ。

 読んでいくと面白い。文章の組み立て方がうまい。すっげえ勉強になる!
 ……1話の終わりが来ないぞ?
 ああっ、やっときた。やっと1話おわった。

 疲れた←

 では、逆にサクサク読めて、面白かった作品を一つ紹介します。
 多大な評価を受けていて書籍化もされているので目に触れることも多いかと思いますが。


 異世界に転生したは良かったけれど、人やエルフじゃなく、蜘蛛になってしまったという主人公の物語なんです。

 クリックした方はきっとこう思うはず。

「まて……これは本当に小説か? 小説なのか? マジで? まったく、読む価値ねえぞこれ。子どもの落書きじゃあるまいし……だけど面白いじゃないか」
 気が付いたら何時間もハマっているという不思議な作品ですが、なにか?

 とてもサクサクと読みやすく、気が付けばハマっているという作品です。
 漫画専門のひとでも読めます。

 子どもにも読みやすい文体で、大人にも十分楽しめる内容なら受け入れられる上に、幅広い圧倒的多数の層から支持されるのです。わたしも蜘蛛さんを読んだおかげで思い知りました。

 そうなんですね。
 文学作品なんかごく一部のコアなマイノリティたちが持ち上げているだけで、一般的にはまったくもって受け入れられないということを証明してしまったのです。

 文学は娯楽ではなく、学問だという人がいます。
 そうなんです。いまや文学は素粒子物理学なみに難解な学問なのです。

 わたしたちオッサン世代ですら子どもの頃は活字離れなんて言われました。
 漫画世代です。
 だって小説はつまんないし。漫画みたいに絵にしてくれたら分かりやすいのに、せめて10ページに1枚は挿絵いれてくれよなんて思ってました。

 まあうちの親も、小説が上、漫画は下。テレビ漫画(アニメ)は下の下と考えてましたからね。

 でもここ数年、いや10年ぐらいかな、小説家になろうのおかげで、小説というメディアがものすごく身近になってきたように思います。

 単純に無料の素人作品を大量に放出しただけではありません。最初はそうだったのかもしれませんが、現在は小説を書く側が、

 どうやればもっと大衆に読んでもらえるのか、
 どう書けば人気が出るのか

 考えて考えて、試行錯誤して、プライドを捨てて(笑)
 現在の姿があるのです。
 まあいまちょっとおかしな方向に行こうとしてる気がしますけれど。

 私のようなジジイは「死ぬ前にひっそりと、作品をひとつ残しておきたいものじゃのう」なんて動機で書いておりますが。雲の上には本気で作家を目指している人も多くいて、切磋琢磨の様子が見られるのもいいものです。

 実は息子の友達などという子らも書いてたりして、なかなか楽しいサイトです。


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